「あ、雨っスね」 「………………」 ハボックの言葉に思わず、書類にサインする手が止まってしまった。 「あ。大佐、もしかして中尉に『雨の日は無能』って言われたことを思い出したんスか?」 「やかましいっ!」 ハボックの言うことは全体の理由の約3割。 残り7割は………。 きっと、あのせいに違いない。 その日は記録的な大雨だった。 しかも、ホークアイ師匠の墓参りに行く予定だったのに、だ。 しかし、今日行かないといつ休日が取れるか分からないこの軍の世界。 私は雨等気にせずに、傘を車に積みホークアイ師匠の墓に向かった。 ホークアイ師匠の墓に着くと先客がいたらしく、花束がもう供えられていた。 綺麗な綺麗なピンクの花。 しかし、この花は何処かで見たことがあるような気がするのは私の気のせいだろうか。 「…………大佐」 傘も持たずに右手にはバケツを持った中尉の姿。 君も来ていたのか。あの花は君が供えたのか? 「風邪を引くだろう。傘の中に入りたまえ」 「大丈夫です。もう帰りますし傘ならありますから」 なら、何故傘をささない。 こんなにずぶ濡れで。間違いなく長い間、傘で雨を防がずに墓に祈りをしていた証拠ではないか。 そんな疑問を抱えたまま。 雨に濡れた中尉をただ見詰める。 そんな心を今から雨が降る。と読んだかのように……… 「私が傘をさしても、父は濡れますから」 濡れた墓。 手を触れたら、水の感触と石の感触。 「……………ほら」 私は自分がさしていた傘を中尉に握らせる。 「君の傘は何処にある?」 「バケツとか置いてるあちらの物置に……。大佐?!」 雨の中を君の傘を目指して歩く。 冷たい風に冷たい雫。 もう少し…… もう少し………… 「これか」 中尉の傘と思われる淡い色の傘を握り、中尉の元へ。 傘をバサと開き、ホークアイ師匠の墓に。 「こうしたら、ホークアイ師匠は濡れない。さ、帰ろうか」 中尉の手から傘を取り、歩き出す。 「大佐っ!」 停めた車の元に行こうとしたら、横に車が通り泥の水しぶきが。 「濡れましたよ」 「いいんだよ。君が濡れなかったら」 「雨の日は無能なのに」 「…………………」 今のは傷付いたぞ。 「…………ありがとうございます」 雨の中で虹が見えた気がした。 あの時に見た君の笑顔がとても綺麗で。 とにかく綺麗で。 雨の度に思い出す私がいる。 「大佐。何、ニヤついてるんですか」 「ん?君のこと思い出してた」 「………………頭でも打ちましたか?」 「……………………」 「とにかく、雨の日ですが頑張って下さいね」 「………ああ」 Rainy days make me sad.(雨の日は気が滅入る) 本当に色々な意味で。 たくさんの思い出とダメージで。 END [先頭ページを開く] [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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