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愛情表現、じゃんけんぽん!


「リタっち〜。いつまで研究してんの〜?」
「オッサン、ちょっと黙っててよ!」

時間は深夜。

リタは魔導器の研究をユーリ達が寝ているテントの外で続けていた。

レイヴンがテントから出て、真っ先に出た言葉がこれだ。

「明日に響くわよー。いくら、若いからってこんな遅くまで起きてるのはオッサンには賛成出来ないんだけど?」
「オッサンには関係ないでしょ!閃いた時が大事なのよ…………」

と、レイヴンにいくら反論してもリタの瞼はとても重い。

(ヤバイ………こりゃ、寝そうね………。でも、寝る訳にはいかないわ!)

せめて、研究はキリのいいところまでいかないと!

という思いと

オッサンにあんなことを言ったんだから、寝たらからかわれるに決まってる!

というジレンマがリタの脳の中で透明な水たまりにインクを垂らしたかのように広がっていく。

(眠っ………。ダメ!ダメっ…………)

リタは眠気覚ましにすぐ横に置いてあるマグカップの中のコーヒーを飲み干す。

「だから、リタっち。寝なさいって」
「ダメ!ダメっ!」
「よーし。じゃ、こうしよう。オッサンとじゃんけんして、オッサンが勝ったらリタっちは寝ること。リタっちが勝ったらオッサンの言うことを聞くこと」
「はあ?!!!なによ、そのルール!!!普通は私が勝ったら起きててもいいでしょ!!?」
「ダメよ。そしたら、オッサンがリタっちにじゃんけんで負けたらリタっちは、『じゃ、私が勝ったから起きててもいいでしょ!』とか言って寝ないでしょ?それはいかんよ」
「なっ!!!ななっ!!!でも、公平じゃないじゃないっ!」

リタに首を絞められ、レイヴンは咳込み息を調えてから口を再度開いた。

「オーケー。じゃ、こうしようじゃないの。オッサンが勝ったらリタっちはオッサンと一緒に寝ること。リタっちが勝ったら、すぐに一人で寝ること」
「はあ?!!!!」
「出さないもんが負ーけ」
「ちょっと!!!」

レイヴンの掛け声にリタは慌てて、じゃんけんをする。

「………ぷっ!リタっち、後出しで負けるとか!!」
「もももう一回よ!!」
「さ、寝ますか」

レイヴンは自分の上着をリタに被せ、リタの肩に手を起き、自分の方に引き寄せた。

「…………な、なにすんのよ!!!」
「温かいだろ?」
「そ、そうね」

リタは瞼を閉じて、ふと気付いた。

さっきのレイヴンとの賭けのじゃんけんの不自然さを。

普通、賭けは勝ったら自分に都合がよく負けたら自分に都合が悪い。


それなのに、さっきのじゃんけんは勝っても負けても、自分に都合が悪いことだった。

(ああ………。そっか)

例え、汚いやり方でもレイヴンはとにかくリタを眠らせたかったんだ。









本当に見せないだけであったけど、心配してくれてたんだ。

すぐ横で大きないびきをかきながら眠るレイヴンにリタは月の雫を空のパレットに落とすかのようにポソリと一言。

「ありがとね。オッサン」

リタはレイヴンの横で瞼を閉じ、なんの根拠もないのに幸せな夢が見れるわね。と思い、眠りについた。













End


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